2013年7月20日土曜日

嘘の言葉


かつて衝撃的なロシア人に出会った。

我が家は両親の方針で、僕が物心つく前から交換留学生の受け入れをしている。
所謂ホストファミリーというやつだ。
中学3年生の時、我が家にやってきた彼女はまさに台風であった。

ガッツリと胸元の開いた服を着て、毎日歌舞伎町のホストクラブへと通う彼女は、
一件問題児のように思えたのだが、
誰よりも勉強熱心で、誰よりも周りを想う人であった。

彼女が帰国するとき、彼女が通う日本語学校で送別会が催されたという。
そこでのワンシーンだ。

クラスのみんなから、彼女へのメッセージが書かれた色紙が渡された。
あなたと離れるのが寂しい
元気なあなたが好きだった
また遊ぼうね
暖かなメッセージが書かれた色紙だった。
しかし彼女は声を荒げた。

「全部嘘」

みんな私とそんなに仲良くなかったのに
煙たがってたのに
なんでそんなことを言うの。
これは暖かい言葉なんかじゃない、全部嘘の言葉。
そんな言葉をもらっても全然嬉しくない。

彼女はそう、吐いたという。


僕は衝撃的だった。
誰よりも優しい心を持った彼女の発言が意外だったこともあるが、
誰とでも仲良くしたいと"エエカッコシイ"をしていた僕に冷水をかけられたような気がしたのだ。

今でも思うのだが、ただ周りにむけて笑顔を作っていた僕は、
自分が本当は何を考えているのかさえ曖昧になっているのだ。
きっと、そこに言霊は無い。

心からの言葉を発するためには、自分が、
何を学び
何を感じ それから
何をするのか。
この繰り返しを記録し、しっかりと轍を残す他にないのだろう。

何のために生まれて何をして喜ぶのか、
それを探して只々日々をやり過ごすのみである。






本日のBGMは 月に負け犬/椎名林檎

0 件のコメント:

コメントを投稿